Schlenkサーベイ-Fine Structure-その3
こんにちは!GiTaNです!
今日は、前回紹介した埋め込み定理にたどり着くための道順をさらっと見てみようと思います!まず、ざっくり次の2段階になっているようです:
- Ball Packing Problem: を解く,
- 埋め込みの問題 を Ball Packing Problem と対応付ける.
まず、1ですが、1994年のMcDuff-Polterovich*1で研究されているもののようで、次で定義される数列を特定しているようです:
さて、このですが、初回に紹介したボールを埋め込んだ際の4次元立方体全体の体積に占める比率(packing numbers)とという関連があるようです。*2
すると、以下が成り立ちます:
k | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
1 |
埋め込み定理と合わせると、が成り立っていることがわかると思います。このままでは整数上しかわからないのですが、どうやって連続量にするのでしょうか?その辺はまたあとでと言うことになるようです。
Schlenkサーベイ-Fine Structure-その2
こんにちは!GiTaNです!
引き続きSchlenkのサーベイを読んでいこうと思います。
今日は、前回定義したPell stairsを使って、EllipsoidをCubeにシンプレクティック埋め込みしていこうと思います。
関数を記述していくのですが、次のように定義域をひとまず3つに分けます:
- ,
- ,
- .
そして、それぞれの定義域上では次のようになっています:
- 上では、は Pell staris で与えられる
- 上では、は7つの disjoint interval 上を除いて、であり、そのdisjoint interval 上では区分的に線形な関数で与えられる*1
- 上では、で与えられる
Pell stairs を階段、を滑り台だとすると、滑り台の上(側)から滑り降りてくると、途中でなんかケツに段々あたるな〜って思ってきて、最後階段なってんの!?っていうダイナミックな関数になっています!謎
次回は、どうやってこんなのにたどり着くのか?という点についてザクっと見ていきたいと思います!
Schlenkサーベイ-Fine Structure-その1
こんにちは!GiTaNです!
今日はシンプレクティック埋め込みの3つ目の結果である the fine structure of symplectic rigidity(長いのでFine Structureと略しています)について見ていくための準備をします!
◆Fine Structure
今回考える埋め込みは、Ellipsoid を Cube に埋め込む問題です。つまり次の関数を具体的に書いたらどうなるか考えることになります:
結果を書き下すのに必要になってくるのが、次で定義されるPell numbers およびhalf companion Pell numbersという数列です:
Wikipedia にも詳しい記事がありました。【参考:Pell number - Wikipedia】
どうやら隣接する項の比がシルバー比 に収束していくようなフィボナッチ数列的な数列みたいですね。
ここで、次の数列を考えます:
このとき、 より、 なので、の収束先が存在すると仮定すれば*1、 となり、明らかには正なので、とわかります。
この数列 を使って、Pell stairs というグラフを作ります。若干説明が複雑です:
- 区間上にのグラフを描く
- からのグラフをにぶつかるまで引き交点を得る
- と原点を結んだ直線とのグラフの交点をとする
- Step2とStep3を帰納的に繰り返す
- 上で得られた点列を順番に直線でつなぎ目的のグラフを得る
以上、次回はこれを使って定理を書いてみようと思います!
Schlenkサーベイ-Total Flexibility-その1
こんにちは!GiTaNです!
年末のゴタゴタもひと段落し、今日から有給休暇となりました!子供のお世話は私担当ということで頑張っていきたいと思います。子供がインフルエンザとかにならないといいなぁ
Schlenkのサーベイを読んでいきたいと思います。
今回は、シンプレクティック埋め込みに関する3つの2つ目であるTotal Flexibilityについて紹介していきます。
◆Total Flexibility
ここでは、Ellipsoid をTorus に埋め込む問題を考えていきます。
結論からいってしまうと、体積以外の障害はないというのが結果になります。
つまり以下が成立します:
シリンダーに埋め込む場合は一切縮まなかったあいつが!トーラスさんには埋め込まれるなんて!みたいな衝撃がありますね。
ちなみに、Vol、Vol だと思うので、になりますね。こういう観点だとTotal Rigidity と同じくあまり構造がないようにも見えます。
この現象の原因は、トーラスさんへの概正則曲線がない(=障害がないっていう)ことだとSchelnkさんは述べていますが、これについてはセクション9を見よとのことなのでしばらく先になりそうです。
次回は最後の1つ fine structure of symplectic rigidity について見ていこうと思います!
Schlenkサーベイ-Total Rigidity-その4
こんにちは!GiTaNです!
クリスマスシーズンになってきましたが、普通に年末で忙しいだけになりつつあります笑
今回は、シンプレクティック埋め込みに関する結果の1つ目であるTotal Rigidityのまとめ回です。3回(その1、その2、その3)に分けて紹介してみましたが、ざっくりまとめると以下の内容となります:
- Ellipsoid をCylinder へシンプレクティックに埋め込む問題を考える(を求める)
- シンプレクティック埋め込みが難しいのは、特にシンプレクティック変換の群が無限次元だからである
- Gromovは概正則曲線の理論を用いて埋め込みによって面積が変わらない局面を構成(=これが埋め込みの障害(obstruction)となる)し、Non-squeezing theoremを証明した
これらをまとめると次の式になります:
ここで、の定義中の埋め込みをシンプレクティックからユークリッドにしても同じ結果となることを考えると、Ellipsoid をCylinderへシンプレクティックに埋め込むのは無限次元分の自由度があるにも関わらず、平行移動と回転しか許されていないユークリッド幾何の時と同じ=かなりカチカチなんだということがわかりました! 次回は逆にグニャグニャになることがあるのか?という問題について見るため、紹介する順序を元のサーベイとは順番を変えてTotal Flexibility についてみていきましょう!
Schlenkサーベイ-Total Rigidity-その3
こんにちは!GiTaNです!
仕事がもりあがってきてしまい更新できませんでした!
引き続きSchlenkのサーベイを読んでいきます
今回は、いよいよNon-sqeezing theoremの紹介です
まずは、前回同様簡単な場合を考えることにします。
ボールが、シリンダーに写像によって、シンプレクティックに埋め込めていると仮定しましょう。
この時、によって、の複素構造も保たれるとします。(つまり、が成立するとする。*1
この時、と[\phi(0)]を含むような中のディスクの共通部分を[\phi]によって引き戻したものをと名付けることにします。 するとは仮定よりボールと整合的な複素構造を持つため、ボールのproperな2次元複素部分多様体になっています。 実はこれが①極小局面になっていて、②極小局面の単調性定理を使うと面積が1以上になることがわかります。 よって、以下が成立します:
これと同様のことを、がの複素構造を保たない場合に示すことができれば、Non-squeezing theorem の証明ができます。 そこでGromovが利用したのがJ-holomorphic map (概正則曲線)というものです。概正則曲線の理論と相性がよいように、シリンダーのディスクの部分を一点コンパクト化してとおき、が接束TM上のJ-不変な平面束上でnon-negative*2となるようなものを考えます。 このときGromovはJを適当に選べば、homology class の中に、リーマン球面からの概正則曲線が存在することを示しました。 あとはさっきと同じで、を考えると、これがproperな複素部分多様体であるのでが1以上であることがわかるという流れになります。
リーマン球面からの概正則写像があるという部分がおそらく一番難しいところだと思いますが、①極小局面になっていて、②極小局面の単調性定理を使うというのも初心者的には結構、そうなのか。。。と思うところでした。一旦流れがわかったのでよしとすることにします。(また、Non-squeezing theorem については触れることがあると思うのでその時に詳しく見ることにしましょう)
Schlenkサーベイ-Total Rigidity-その2
こんにちは!GiTaNです!
今日も元気にSchlenkのサーベイを読んでいきたいと思います。
記号の定義はここです!
さて、前回は Ellipsoid を Cylinder に埋め込む問題を考えれば、一般の を に埋め込む問題を考えたのと同じことだよね。というところまで読みました。
今回は、「埋め込みを調べることの難しさ」と「変形の群の大きさ」関係性についてサラッとみていきましょう。
まず、シンプレクティック埋め込みの障害( obstruction )として、一番簡単なのは、体積です。シンプレクティック形式(と書く)を不変にする写像では、体積要素(4次元の場合はと書ける)も不変になるため、シンプレクティック埋め込みによって埋め込まれる多様体の体積は不変になります。よって、AがBにシンプレクティック埋め込み可能な場合、 が成立しないといけないことがわかります。
しかし、今の状況では、 ですが、なので、体積はあまりこの問題によい情報を与えてくれなさそうです。
そこに登場したのが、以下の Gromovの Non-squeezing theorem でした:
(ちなみに逆は当たり前です。)
でもこれ、ボールじゃんと思うのですが、よく考えてみるととなって間に挟まれるので、でもが必要十分条件であるとわかります。
さて、主張はかなり理解しやすいNon-squeezing theorem は難しい定理なんでしょうか?(もちろん偉大な定理かつ難しい定理ですが、あえて考えてみましょう)
これを考えるために、シンプレクティック幾何学から馴染みのあるユークリッド幾何学に問題を変えてみましょう。つまり、ボールをシリンダーにシンプレクティック埋め込みする代わりに、ユークリッド埋め込みするという問題を考えてみるわけです。
これは、ボールを平行移動と回転だけでシリンダーに埋め込んでみようという問題と等しいわけなんですが、頭の中でボールとシリンダーをクルクルしながら、ちょっと考えてみてください。
すると、ボールの回転対称性からボールの半径以上の半径をシリンダーが持っていないといけないことは明らかだと思います。
つまり、がやっぱり必要十分条件となるのですが、重要なのは、ユークリッド埋め込みの場合は許される変形のなす群は平行移動と回転の組み合わせ分しかないのでの4次元分とSO(4)の次元分の自由度程度つまり有限次元の自由度しかないしかないということです。
なんだか、変形の方法が少なければ少ないほど問題は簡単になりそうですね。
では、シンプレクティック埋め込みはどうかと言うと、その変形の群は無限次元です。例えば、 をなめらかな関数とします。このとき、 について、 を満たすをハミルトンベクトル場といいますが、これによって生成される flow はシンプレクティックな変形になっています。実際、カルタンの公式からとなります。( Lはリー微分、は内部積)
は定数分のずれを除いてそれぞれ違う変形を生み出しますから、これらを全て含むシンプレクティックな変形の群は無限の自由度を持つ無限次元の群であるとわかります。(ちなみに、シンプレクティックな変形はこのように関数で与えられるものだけではないことがわかっています。)
変形の群が小さければ小さいほど簡単と言うことは、無限次元だと埋め込めるかどうかを考えるのは、かなり難しそうだということがわかってきました。
次回は、 Gromov がこの無限次元の変形の中で見つけた埋め込みの障害( Obstruction )についてみていきましょう!楽しみですね!