数学で英語を勉強するブログ

昔数学を嗜んでいた社会人が苦手な英語の勉強をするブログです。数学の話題も扱っていきます。

Schlenkサーベイ-Total Rigidity-その2

こんにちは!GiTaNです!

今日も元気にSchlenkのサーベイを読んでいきたいと思います。

記号の定義はここです!

さて、前回は Ellipsoid E(1,a) を Cylinder Z(A) に埋め込む問題を考えれば、一般の E(a,b)Z(A) に埋め込む問題を考えたのと同じことだよね。というところまで読みました。

今回は、「埋め込みを調べることの難しさ」と「変形の群の大きさ」関係性についてサラッとみていきましょう。

まず、シンプレクティック埋め込みの障害( obstruction )として、一番簡単なのは、体積です。シンプレクティック形式(\omegaと書く)を不変にする写像では、体積要素(4次元の場合は \omega \wedge \omegaと書ける)も不変になるため、シンプレクティック埋め込みによって埋め込まれる多様体の体積は不変になります。よって、AがBにシンプレクティック埋め込み可能な場合、 volume(A) \leqq volume ( B ) が成立しないといけないことがわかります。

しかし、今の状況E(1,a) \hookrightarrow Z(A)では、volume(E(1,a))=\frac{a}{2} ですが、 volume(Z(A)) =\inftyなので、体積はあまりこの問題によい情報を与えてくれなさそうです。

そこに登場したのが、以下の Gromovの Non-squeezing theorem でした:

B^{2n}(1)\hookrightarrow Z^{2n}(A) \Rightarrow A\geqq 1

(ちなみに逆は当たり前です。)

でもこれ、ボールじゃんと思うのですが、よく考えてみるとB(1)\subset E \subset Z(1)となって間に挟まれるので、E(1,a)でも A\geqq 1 必要十分条件であるとわかります。

さて、主張はかなり理解しやすいNon-squeezing theorem は難しい定理なんでしょうか?(もちろん偉大な定理かつ難しい定理ですが、あえて考えてみましょう)

これを考えるために、シンプレクティック幾何学から馴染みのあるユークリッド幾何学に問題を変えてみましょう。つまり、ボールをシリンダーにシンプレクティック埋め込みする代わりに、ユークリッド埋め込みするという問題を考えてみるわけです。

これは、ボールを平行移動と回転だけでシリンダーに埋め込んでみようという問題と等しいわけなんですが、頭の中でボールとシリンダーをクルクルしながら、ちょっと考えてみてください。

すると、ボールの回転対称性からボールの半径以上の半径をシリンダーが持っていないといけないことは明らかだと思います。

つまり、 A\geqq 1がやっぱり必要十分条件となるのですが、重要なのは、ユークリッド埋め込みの場合は許される変形のなす群は平行移動と回転の組み合わせ分しかないので R^4の4次元分とSO(4)の次元分の自由度程度つまり有限次元の自由度しかないしかないということです。

なんだか、変形の方法が少なければ少ないほど問題は簡単になりそうですね。

では、シンプレクティック埋め込みはどうかと言うと、その変形の群は無限次元です。例えば、 H: R^4 \times [0,1]\rightarrow R をなめらかな関数とします。このとき、 H_t := H(\cdot,t) について、 -dH_t = \omega(X_t,\cdot) を満たすX_tをハミルトンベクトル場といいますが、これによって生成される flow  \phi_tはシンプレクティックな変形になっています。実際、カルタンの公式から L_{X_t}\omega = \iota_{X_t}d\omega + d\iota_{X_t}\omega = 0 - ddH_t = 0となります。( Lはリー微分\iotaは内部積)

 H_t は定数分のずれを除いてそれぞれ違う変形を生み出しますから、これらを全て含むシンプレクティックな変形の群は無限の自由度を持つ無限次元の群であるとわかります。(ちなみに、シンプレクティックな変形はこのように関数で与えられるものだけではないことがわかっています。)

変形の群が小さければ小さいほど簡単と言うことは、無限次元だと埋め込めるかどうかを考えるのは、かなり難しそうだということがわかってきました。

次回は、 Gromov がこの無限次元の変形の中で見つけた埋め込みの障害( Obstruction )についてみていきましょう!楽しみですね!