数学で英語を勉強するブログ

昔数学を嗜んでいた社会人が苦手な英語の勉強をするブログです。数学の話題も扱っていきます。

Schlenkサーベイ - 4. Why study symplectic embedding problems その4

こんにちは!GiTaNです!

今日のテーマは、Short term super-recurrence です。*1

Hを時間に依存することも可能な Hamiltonian System として、さらに半径1のボールB^{2n}(1)を保つようなものとします。つまり、Hから\iota_{X_H}\omega=-dHによって定義されるベクトル場X_Hが、ボールの境界(=球面)に接している(つまり、球面上に制限したものが球面上のベクトル場とみなせる)とします。

このとき、時点tのHamiltonian flow\phi_H^tはボール上のHamiltonian diffeoを定義していますが、ここで次の問題を考えます:

離散的な変形の列\{\phi_H^k\}_{k\in \mathbb{Z}}によって、ボールB(a)(ただし、 a > \frac{1}{2}とする)とシンプレクティック同相な開集合Uの像の列\{\phi_H^k(U)\}_{k\in \mathbb{Z}}を作ったときに、U \cap \phi_H^k(U) \neq \emptysetとなる最小のkはなにか?

つまり、U\phi_Hで何回も写していった時に、いつUと被りますか?

っていうことなんですが、シンプレクティック同相が体積を不変にすることを考えるとUの体積は仮定より\frac{1}{2^n}より大きいので、U2^n回目までの像 U,\cdots,\phi_H^{2^n}(U) たちは、それぞれが \frac{1}{2^n} よりも大きい体積を持つので、これらが全て重複しないとすると、U,\cdots,\phi_H^{2^n}(U) たちの体積の合計が全体の体積を超えてしまうので、どっかでは被ってることになります。ハトの巣原理みたいな感じでk2^n-1以下であることが分かるわけなんですが、実はGromovによって次の結果が得られています:

B(a)\coprod B(a)\hookrightarrow B(A) \Rightarrow 2a\leqq A.

これによると、 a > \frac{1}{2}と仮定している場合は、B(a)を被らないようにB(1)へ2つ埋め込むことはできないことになるので、U\cap\phi_H(U)\neq \emptyset になりk=1とわかります。

体積だけだと指数オーダーだったkの評価が、正確にわかっただけでなく1ってやばない?????

同様にして1回目に被りが発生するようなkを体積が有限な領域について考えることで、Volume preserving diffeo と symplectomorphism の境界を考えることができるようになりますが、2,3,4,\cdotsと回数を増やしていくと、いつの間にか埋め込みの自由度が増してきて、n個の領域がすっぽり入るようになるようです。そういえば、4次元のボールの場合は、8個から隙間なく被覆されるようになりましたね。マジかよ。

 

以上!

*1:Why study symplectic embedding problems 全体の目的は、シンプレクティック埋め込みの障害をどうにか見つけよう!ということでした。